合格体験記
正解のない問いに向き合い、京大合格!
まほさん
現役、一浪とほとんど勉強しなかった。家には誘惑が多すぎたからだ。
通信コースに入っていたが通塾したい思いが強く、二浪目が決まった時、親に相談した。
そこで母から課された通塾の条件は、バイトをすることだった。
バイトしながら通塾か。
どうだろう、いけるか? 不安が押し寄せる。
でも、どうしても京大に行きたかった。うだつの上がらないこの生活から脱却したかった。クソみたいに怠惰なこの性格を変えたかった。
よし、腹は決まった。
二浪目が始まる。
朝5時過ぎに起きてバイトへ行く支度をする。楠葉(くずは)の朝は人通りが少なく澄んでいて、自転車で街を駆け抜けるのが気持ちいい。
私を採用してくださったコンビニの店長は、人当たりがとても良く働きやすい職場だった。
人生初のバイトだったが、安心して楽しく働けた。
バイトへの行き帰りは、自転車に乗りながらキング牧師の演説を暗唱したり、品出し中は化学の白紙法を頭の中で反復したり。トイレ掃除中は古文の助動詞をぶつぶつ唱えた。
あらゆる隙間時間を貪るように勉強にあてた。
コンビニにはいろいろな人が来る。常連さんと少し話したり、店長に少し怒られたり、励まされたりと、良い社会勉強になった。
だから、「みんなは勉強してるのに私はバイトで勉強が出来ていない」という焦りはまったくなかった。
塾で教わった、「世のため人のために役立つ人間になれるように、いま勉強していく」という考え方を、実際に働くことで、身をもって体感できることが嬉しかったからだ。
そう思うことで、働くことに前向きになれた。
時には1日10時間も働いた。
それでも、食費が足りず、4月から9月くらいまでは通帳とよく睨めっこしていた。苦しかったが、塾の静謐(せいひつ)な空気や、エネルギーに満ちた塾生を見ていると、私も頑張ろうと思えた。
襲ってきた「罪悪感」
10月に入り、仕送りを増やしてもらいバイトを辞めた。
勢いをつけながら、序盤、中盤に培(つちか)った基礎を過去問演習で応用し、アウトプットしていく。
講師や大学生にその場で問題を解いてもらい、感覚をインストールする。
毎日のテストやノート提出で、どんどん力がつき、京大に合格する可能性が見え始めた。
ただただ勉強が楽しく、のめりこむように机に向かい、飛ぶように日々が過ぎていった。
しかし、同時に、自分の中で大きなドス黒い感情が渦巻いていった。
バイトを辞めて、親にお金を出してもらって、美味しいごはんを三食食べて、静かな部屋に清潔な服、素晴らしい先生方に囲まれて勉強できている状況に、罪悪感を強く感じるようになったのだ。
なぜ、私はこんな恵まれているのか。
私は、こんなにたくさんのものを享受していい人間じゃない。そんな器じゃない。
世界の裏側では、多くの人が餓死していく。
武装した人間に大切な人が殺されていく。
明日があるかもわからない、そんな凄惨(せいさん)な中で必死に生きている人がいる。
彼らと私の違いは何か。
なぜ私は苦しんでいないのか。
格差とは何か。
なぜ戦争があるのか。
戦争がなくなったらどうなるのか。
平和とは何か。
正しい生き方とは何か。
・・私とは何か。
「正解なんてない」
一つの罪悪感から、問いが膨らみ膨らみ、抱えきれなくなって潰される。
答えのない問いを知らぬ間に考え続けていることに気づき、慌てて勉強に戻るが、まったく集中できない。
ただ、この世界がむごく、醜く、どうしようもないことに絶望して、回り回って自分に絶望して泣く。勉強どころではなかった。
毎日のルーティンが崩れ、手帳も書かず、鬱屈(うっくつ)とした日々。
静かな雨がさわさわと降る11月のある夜、突如、ゆば先生と話そう、と思った。
この状況をなんとかしなくてはいけない。
階段を駆け上り、ゆば先生に突撃する。
そして自分の不甲斐なさや雑念を書き殴った手帳を見せて、号泣した。
ゆば先生は、私の様子を見て、優しくも厳しく叱ってくださった。
前を向けと導いてくださった。
その時、教えていただいた、心に残っていることがある。
ということだった。
私はモヤモヤしたことが嫌いで、正解探しをする癖があった。
でも、〝正解らしきもの〟にたどり着いたとき、そこに安住して、もっとよい答えに至る可能性が失われることを教えていただいた。
みんな、何が正解かわからずモヤモヤしながら生きている。
それでいい。だからこそこの世界は面白い。
そして、問いを立てること自体は良いことだから、ノートに書き溜めて、大学生になったらもう一度考えてみれば良いよ、とゆば先生にアドバイスしていただいた。
その日から、徐々に雑念が消えていき、また目の前の勉強に没頭できるようになっていった。
あっという間に京大の二次試験当日。
私立の滑り止めにほとんど落ちてしまったことも構わず、自信に満ちあふれていた。
私ならできる。絶対受かる。受験なんてとっとと終わらせて、早く自分の好きな勉強がしたい。
そんな思いだった。
特に緊張することもなく、すべての試験が終わった。
合格者一覧の中に自分の番号を見つけた時も、ああ良かった、という安堵感だけで、飛び上がるような嬉しさはなかった。
やっとスタートに立てた。
こっからが勝負だ、ここからどう生きるかだ。
早くたくさんのことを学びたい。はやく、はやく、もっと。
受験が終わったのに、私の知的好奇心はくすぐられるばかりで、心の中はエネルギーに満ちていた。
この塾では、大学合格をゴールとしない。
ゴールはもっと先にある。
高い高い理想を持ち、志を立て、世のため人のために役立つ人間になったらいいと教わる。
一分一秒を大切に生き、たくさんのことを学び、世界をよりよくしたいと本気で考えている大人たちがいる。
そんな奇跡みたいなところで、私は学び、これからも学んでゆく。
あなたが、この塾を見つけたことは紛れもなく奇跡だ。
その、数々の偶然が重なってできた奇跡を大切にして、どうか勇気を出して一歩踏み出してみてほしい。
まだ、自分は変われる。
まだ、この世界は変われる。
そう、心から信じて、私は生きていくし、
あなたもそう生きれたら良いなと勝手ながら願っている。
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