1.共通テスト地理の特徴
まずは、共通テスト地理の全体像について紹介していきます。
1-1.共通テスト地理の全体像と暗記量
地理では、暗記で点数が取れる問題が、社会の他の科目に比べて少なくなっています。
つまり、暗記が苦手な人でも点数が取れるという言い方もできますし、逆に言うと、グラフの読解や地形図の読解など、本番で必要となる力があるので、安定して高得点を取ることが難しいというのが特徴となっています。
理系の人は、社会の勉強時間がどうしても多く取れないので、日本史や世界史に比べて暗記の少ない地理はオススメです。
ただし、どれだけ勉強しても地理のセンスがない人はなかなか成績が上がらず、頭打ちになってしまうということがあるので、まずはそもそも自分が地理を選択すべきかどうかの適性をチェックするようにしてください。
具体的に言うと、パリがフランスの首都であるか分からないとか、宮城県と宮崎県の違いが分からない、などと言う場合は地理はオススメではありません。
特に、社会ではどれぐらいの点数が欲しいのかを、あらかじめ決めておく必要があります。
文系の人でも、9割以上の点数をコンスタントに取れるのであれば、やりすぎだと言うふうに思ってください。
理系の人だと8割を超えていれば十分で、7割~8割くらいの点数でちょうど良いでしょう。
それ以上に、英語、数学、理科の勉強を優先すべきです。
1-2.系統地理と地誌の勉強のポイント
これら2つは別々のように考えられていますが、実際には同じことを勉強しています。
例えば、日本で考えた場合、大阪という都市の特徴について勉強するのは地誌ですね。
ですが、北海道は亜寒帯で、日本本島は温帯という形で勉強すれば、これは系統地理という分類になります。
大阪を地域で見るのが地誌、そして別の角度で気候という観点から見れば、系統地理となります。
ですので、地理が得意な人からすると、同じことを勉強しているという風に考えることができます。
逆に、地理が苦手な人からすると、「こんなに覚えることがあるのか」と言うふうに思ってしまいますが、知識がつながるように勉強していけば、覚えるべきことはそんなに多くないことに気がつくことができるでしょう。
基本的には系統地理から勉強していった上で、地誌の勉強した方がオススメです。
しかし、例えば、
- サッカーが好きでヨーロッパが得意
- メジャーリーグが好きでアメリカが得意
というように、自分が好きな地域があるということであれば、まず1つの地域について詳しくなることによって、地理の突破口を見つけることができます。
なので、自分のやりやすい方から進めていってもらっても構いません。
2.共通テスト地理の試験問題
次に、共通テスト地理の試験問題の特徴について解説していきます。
2-1.共通テスト地理の出題形式(出題内容と構成、配点)
共通テスト地理の試験は、6つの大問とマーク数35問で構成されています。
例年、大問ごとの問題数や配点に大きな変化はありません。
主な出題内容としては、
-
第1問 世界の自然環境と自然災害(設問数6、配点17点)
-
第2問 資源と産業(設問数6、配点17点)
-
第3問 都市と村落、生活文化に関する問題(設問数6、配点17点)
-
第4問 地誌(設問数6、配点17点)
-
第5問 地誌(設問数5、配点⒕点)
-
第6問 地域調査(設問数6、配点18点)
となっており、いずれも地理的な思考力を問う問題が多くなっています。
2-2.過去5年分の出題例
第1問~第3問までは、毎年テーマ毎の出題となりますが、第4問~第6問については、毎年地域が異なる出題となります。
直近5年間の出題範囲は、以下の通りです。
- 第4問 地中海沿岸と周辺地域、西アジアとその周辺地域、中国、ヨーロッパ、南アメリカ
- 第5問 ウクライナとウズベキスタン、北欧3か国、西アジアとその周辺地域、スペインとドイツ、インドと南アフリカ共和国、ヨーロッパ
- 第6問 宮崎市、岐阜県高山市、長崎県壱岐島、岩手県北上市、北海道富良野市
特に、第4問と第5問の地誌については、あまり馴染みのない国が出題されることもあるため、各国の特徴について満遍なく知識をつける必要があります。
3.共通テスト地理の具体的な勉強法と対策
それでは、ここから共通テスト地理の具体的な勉強法の説明に入っていきます。
3-1.共通テスト地理 序盤の勉強法
では、序盤をはじめる前の準備体操を始めましょう。
『新詳高等地図』(帝国書院)の1ページ目を開いてください。
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そこに世界地図があります。
これを、だいたいの形でけっこうですから、描けるようにしてください。
描くときに注意してほしいのは、赤道が通る国名、北緯30度の線が通る国名、北緯60度の線が通る国名、南緯30度の線が通る国名。
それらをぜんぶ覚えてください。
次に、3、4ページ目に載(の)っている地図の記号は、だいたい覚えてください。
次は、『新詳高等地図』の巻末を開けてください。
そこに統計資料がありますよね。
世界191カ国の国名、場所、首都名、太数字のだいたいの値、おもな民族、おもな宗教、おもな言語を覚えてください。
これだけ準備しておけば、あとは、もう勝ったようなものです。
いよいよ序盤のスタートです。
地理の序盤の勉強に関しては、教科書よりも、以下の教材がおススメです。
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これらのほうが使いやすいので、序盤から、2〜3回通読することをオススメします。
南極老人のイチオシで、カラーが豊富で見やすく、受験に必要な知識がすべて網羅(もうら)されています。
これを完ぺきにマスターすれば、どんな大学にも対応できます。
共通テストだけで地理が必要な受験生は、どちらか自分が気に入った方を選んでください。
私立・国公立の試験でも地理が必要な受験生は、どちらも完ぺきにしておきましょう。
3-2.共通テスト地理 中盤の勉強法
では、中盤に入ります。ここでは、さっそく共通テスト過去問を解いていきます。
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「えっ、時期的に早くないですか? 用語の暗記はしなくていいの?」
と思うかもしれません。
しかし、地理は単なる暗記よりも、与えられた図・表・データを読み取る力が必要となります。
そのためには、問題演習が上達への一番の近道です。
問題の質・量・バランスなど、総合的に考えてみても共通テストに肩を並べるほどの良問はありません。
私大対策としても価値が高いので、高3の夏休みか、遅くとも9月ぐらいから、共通テストの問題演習を始めましょう。
1週間に1年分でもかまいません。
また、「正解すれば終わり」ではなく、正解の理由と、不正解の理由を、
解説と『山岡の地理B教室 大学受験地理』や『地図帳』や『地理データファイル』(帝国書院)で調べながら理解を深めることです。
気がついたことがあれば、『山岡の地理B教室 大学受験地理』にどんどん書き込んでください。
そうやって自分が使っている教材をパワーアップさせていきます。
共通テスト過去問と『山岡の地理B教室 大学受験地理』を連結して、自由に往復できるようにします。
最終的には、「この問題のポイントはあのページに書いていたな」と思い出せるようになれば完ぺきです。
3-3.共通テスト地理 終盤の勉強法
最後に、終盤の勉強法についてお伝えしていきます。
共通テストの問題には、ぎっしりと、情報が詰め込まれています。
理想の形は、『山岡の地理B教室』と『共通テスト過去問研究(赤本)』を何度も往復することです。
とにかく、『山岡の地理B教室』を完ぺき(90%以上)に頭に入るまで、共通テスト過去問(場合によっては、他の問題集も)をどんどん解きます。
問題を解いて、答え合わせをして、間違ったところを、『山岡の地理B教室』に戻って暗記し直し、共通テスト過去問と『山岡の地理B教室』を往復するのです。
問題演習で間違ったところを『山岡の地理B教室』で強化していきます。
人は間違ったときに大きく学びます。
往復しながら、『山岡の地理B教室』を完ぺきな状態に近づけるようにしてください。
共通テスト過去問を10回分以上解いたら、次の問題集に移ります。
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3-4.インプット(暗記)の際の注意点
過去問で点数が60点~70点くらいとれるようになってきたという人は、予想問題集等を使って、『山岡の地理B教室』にどんどん書き込んで充実させていきます。
そして、それを反復し、共通テストで80点以上狙っていく、という戦略が良いと思います。
中には90点以上ほしい、満点を狙いたいという人もいるかもしれません。
しかし、基本的に社会において90点~100点を狙うというのは、あまり戦略としては有効ではありません。
それよりも、英語や数学で確実に高得点が取れるようなトレーニングをしていくことをオススメします。
社会では70~80点あたりを目標点にして、他の教科をしっかりと得意にしておくというような戦略で、地理の勉強を進めていくのが良いでしょう。
4.共通テスト地理のオススメの参考書・問題集とその使用法
ここでは、地理の勉強を進めていくにあたって、おすすめの参考書や問題集を、その使い方と合わせてお伝えしていきます。
4-1.共通テスト地理のオススメの参考書
まずは、共通テスト地理のオススメの参考書についてです。
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この『山岡の地理B教室』は、地理の勉強を始めたばかりの受験生におすすめです。
地理の“最初の1冊”として適しています。
このテキストは、私も受験生の頃によく使っていました。
地理のテキストを選ぶとき、資料のデータが更新されているのかを気にされる人もいるかもしれませんが、この本は今も増刷のたびにデータは更新されています。
私が使っていたときのテキストと最新版とでは本文は同じですが、データは最新のものに更新されていますので、その点はご安心してください。
『山岡の地理B教室』使い方のポイントについては、『山岡の地理B教室』の使い方の3つのポイントという記事で詳しく紹介しています。
4-2.共通テスト地理のオススメの問題集
次に共通テスト地理のオススメの問題集を紹介します。
『山岡の地理B教室』は、いくら使いやすいとは言え、この1冊で共通テストはOK、とは言いません。
この『山岡の地理B教室』を勉強した後は、山川出版の『センター試験への道』などを使って単元ごとの問題演習と共通テスト対策をしてください。
まず『山岡の地理B教室』で流れをつかんで、暗記ページのテキストを覚えていき、最後に『センター試験への道』 で単元別で仕上げます。
そして、分からないところや苦手なところがあれば、この『山岡』に戻ってくる、というサイクルで反復していくのです。
その後、共通テストの過去問を赤本や黒本で1年分を順に解き、実力を確認しましょう。
ここまで取り組めば、共通テストでも十分戦えるレベルになっていけます。
それでも地理は苦手だ、不安だな、もっと勉強したい、という人は、必要に応じて参考書を増やしていってください。
4-3.新詳高等地図(地図帳)、データファイルの活用
まずは、国名と首都名は完ぺきに言える必要があります。
そして、過去問や問題集などで苦手な地域があったならば、その都度『新詳高等地図』を見て、国、首都、主要都市などは覚えていくようにしてください。
また、名前だけではなく、気候・産業(工業・農業)など、いろいろな角度から暗記を進めていくようにしてください。
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データファイルについては、例えばバナナの産地はフィリピンなどの、主なデータは覚えるべきです。
ただし、中国やインド、アメリカなどは、そもそも人口が多いため、どのデータを見ても上位に表示されていることが多いので、あまり参考にはなりません。
それよりも、その国独自の生産物や、その生産物の典型的な国を覚えておくことによって、点数アップにつながります。
データは毎年変わりますが、大学入試で必要とされるデータというのは、5年~10年にわたってほとんど変わっていないものばかりですので、細かなところまでデータを覚えすぎないようにしてください。
むしろ覚えすぎると点数が下がることがあります。
また、東南アジアなどでは、東南アジアの中で特に先進国もしくは発展途上国、それぞれのGNP人口などは覚えたほうがいいです。
例えば、ヨーロッパなどでも、大きく分けるとフランスやドイツは発達しているという形になりますが、ではスペインとイタリアだったらどっちの方が国力があるのかなど、データでしっかりと確認しておくと、設問を解くときに迷いがなくなります。
過去問でデータの問題が出て迷ったときは、ぜひデータファイルを参考にするようにしてください。
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4-4.目的に合ったオススメの教材
地理の勉強法の基本は『山岡の地理B教室』で全体像をつかみ、
『共通テストの過去問』を使って、問題に慣れていくことがメインになります。
そういった勉強をしていく中でも、なかなか点数が上がらない、という人がいると思います。
そういった場合、社会の勉強では、目的に合わせて教材を選ぶということが大切です。
特に、共通テストでは、統計やデータに関する知識が無いのに、いきなり解け、という問題がけっこう出てくるんですね。
そういった問題を解くのにオススメなのが
「地理B統計・データの読みが面白いほどわかる本」 です。
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中身は、共通テストの過去問を使って、
「ここに目をつければ、実は知識が無くても解けるよ」
「これだけの知識があれば、フツーに解けるんだよ」というような、種明かしをしてくれる本です。
もし、統計データの問題が苦手という人のうちシンプルな問題は山岡で解ける、という場合は、この教材が良いでしょう。
このように、目的別のオススメ参考書については、「地理受験者必見!オススメ参考書とその使い方を大公開!!」という記事でより詳しく紹介しています。
5.共通テスト地理 過去問の活用方法
それでは、過去問の活用方法について詳しく見ていきましょう。
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まず地理の場合、古い年度の過去問はデータが異なってしまうので、あまりオススメではありません。
具体的には、直近の10年分の本試、追試の勉強に留めておくべきでしょう。
それ以上古い年度を勉強するよりも、河合塾などの予想問題を解いていった方がオススメです。
また、地理の問題は、勘で正解しても意味がありません。
なぜその正解を選んだのか、正しくそのプロセスが説明できるようになって本当の意味で正解になります。
もし、間違った場合はどんな知識が抜けていたのか、どう考えれば正解できたのかということを研究していくようにしてください。
また、『センター試験への道』では、単元ごとに過去問が集められているので、分野ごとの弱点を克服したい、自分がどの分野が苦手なのかを発見したい、という場合には、過去問とともに『センター試験への道』を活用するようにしてください。
もし弱点が見つかった場合は、もう一度バイブル本に戻って知識を穴埋めしていく必要があります。
また、過去問で間違った問題はもう一度解き直して、不正解になるようであればノートに書き出すなどして、完璧にしていくようにしましょう。
6.共通テスト地理で高得点を取るために
共通テスト地理で高得点を取るためには、まずは知識問題を確実に点数を取ることが大事です。
また、四択の選択問題といっても、ある程度の知識、もしくは読解力があれば、実質二択にまで絞ることができます。
そして、その二択で確固たる自信がなかったとしても、地理的なセンスや常識を活用すれば、おそらく正解はこちらだろうということを、十中八九正解することができるようになります。
そうすれば、安定して8割、場合によっては9割以上の点数を取ることができるようになりますが、問題との相性や運も関係してきますので、9割以上をコンスタントに取れるようになるまで勉強するのは避けるべきです。
7.共通テスト地理の勉強法まとめ
ここまで、共通テスト地理の勉強法についてお伝えしてきました。
共通テストの過去問やマーク模試の予想問題を解いたときに目標とする点数は、社会の場合は、難関大学を目指す場合でも80点くらいでいいと思います。
地理で90点以上を狙うよりは、英語か数学(理系なら理科)で点数を取ったほうがいいんです。
「地理で最低これくらいは取っておきたいな」っていう点数に到達できたなら、それ以上先の参考書は必要ありません。
逆に「80点が目標」「80点以上取りたい!」と思っているにもかかわらず、『山岡の地理B教室』を解き、共通テストの過去問を5年か10年分やったけど、60点くらいしか取れない、という場合は、その不足の20点を埋めていかないといけないわけです。
それを、どういった教材で埋めていけばいいのかを考える時、まず、自分が現時点でどういった問題が弱点となって点数を落としているのかを、チェックしていく必要があります。
「地理受験者必見!オススメ参考書とその使い方を大公開!!」という記事では、多くの教材をおススメしていますが、全部をやる必要はありません。
自分の目標点に到達したら、社会の勉強というのは、それ以上やる必要はありませんよ。
もし、それ以上やらなきゃならない人がいるとしたら、東大や京大、もしくは筑波大など、一部の大学の二次試験で地理が必要、という人だけです。
基本は、共通テスト対策がメインだと思いますので、目標点に到達できていたら、それ以上はやらずに、維持できるような勉強だけして、あとは他の教科に勉強時間を回していく、という形をとってください。