受験生に意志がある時、ない時の親の接し方 合格のカギは親子関係~受験生に

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柏村 真至

柏村 真至

京都大学文学部卒。浪人が決まった春、受験の達人南極老人に出会い、逆転合格を果たす。『E判定からの大逆転勉強法』などを執筆し、一躍カリスマ講師に。南極老人いわく「彼ほど完璧に大逆転勉強法を実践した受験生はいない。さらに〝戦闘値〟がアップしたスーパー大逆転勉強法と出会える受験生は幸運だ」と。

今回は、合格する受験生の親子関係シリーズです。

親子関係は、受験生にとっても、親御さんにとっても質問が多いテーマです。

多くの受験生を見ていると、親御さんからの質問の中で多いのが、「子どもの意志が感じられないのですが、どうしたらいいですか?」というものです。

子どもに、「どこか行きたい大学、志望大学はあるのか」とか、「将来やりたいことはあるのか」と聞いてみても、「特にない」みたいな返事しか返ってこない、という悩みです。

もう一つは、「子どもに将来への意志はあるんだけど、本当にその方向で大丈夫かな、それってリスク大きいから心配だ」といったお悩みです。

そういう親御さんからの相談にどういうアドバイスをしているかをお伝えしていきます。

【動画】進路が決まらない時の対策

受験生に意志がない理由~激動の時代の今、やるべきこと

まず、親御さんの世代と現代の受験生の世代で見て圧倒的に違うのは、「あの大学に行きたい」「将来、こういう職業につきたい」という受験生が、現代は非常に少ないんです。

僕が受験生の頃と言えば15年ぐらい前ですが、その時に比べても、そういった受験生は減ってきているな、と思います。

そうすると、親御さんの世代から見ると、あまりにも違いすぎて、「うちの子どもは何を考えているのかわからない」と心配になるのは当然です。

ですが、そもそも、今の時代、将来のビジョンをもっている受験生は少ない、と認識してください。

それは、なぜだと思われますか?一番大きい原因の1つは、「時代が激動していること」です。 たとえば、昔から小学生の将来なりたいものランキング、というアンケート調査があります。昔は、「プロ野球選手になりたい」「サッカー選手になりたい」といった夢が多かったのですが、最近ではyoutuber になりたい、と言う小学生が出てきています。

私が受験生の頃は、そこまでインターネットは流行っていなくて、youtubeというものがあったかどうかも覚えていないぐらいです。当然ながら、youtuber という職業もありませんでした。

つまり 現代は、10年前、15年前にはなかった職業が、小中学生が視野に入るようになってきているということ。そういう職業が生まれてきている、ということです。

また一方で、人工知能の登場によって、10年後、20年後にはなくなる職業TOP100といった情報が発表されています。スーパーのレジが、人工知能にとって代わり、セルフレジになっていくとか、人の手を介さずベルトコンベアで運ばれていくようになるなら、そのための人手はもう不要になる。そういった情報が紹介されているのです。

つまり、今まであったものがなくなっていき、今までなかったものが新しくできてきたりしているってことですね。

こういう背景から、子どもたちが「将来、〇〇したい」と思いにくいのです。そういう面を考えると、高校生がどこの大学に行きたいとか、何の学部に行きたいとか、将来どうなりたい、という気持ちを持てなくても何も不思議ではない、という状況なんです。

むしろ、確固としたものを持っている方が、逆にそれに縛られて、それに執着して、視野が狭くなり、可能性が狭くなる時代になりつつある、と言えるのです。

だったら、親はどうしたらいいのか、受験生に何を求めたらいいのか、というと、勉強面に関して言えばシンプルです。

たとえ今、行きたい大学を決められていなかったとしても、秋から冬になるにつれ、入試の時期が近づいてきたら、大学に関する情報も入ってきます。情報が増えてきます。すると、自分がどこの大学に行くか、何の学部に行くかは、自ずと選べるようになっていくのです。

今、行きたい大学がないからといって、それを理由にして、やる気がでない、勉強する気がしない、勉強していない、という状態はもちろん問題です。そういう時は、 仮でいいので、目標を東大や京大、医学部、法学部と設定しておくのです。

実際に行かなくてもいいのです、仮に決めておくだけです。

そして、今のうちに、とにかく学力を高められるだけ高めておこう、と言うことです。入試本番が近づいてくると、急に「〇〇大学に行きたい!」という気持ちがわいてくることがあります。

こういう方向性で進みたくなった、と心が生まれてきた時に、自由にシフトチェンジできるように準備しておいたらいい、と言うことです。

言い換えれば、受験生にとって学力っていうのは「お金」みたいなもので、お金持ちになったからといって、贅沢な暮らしをするかどうかは別の話です。

だけど、お金があれば、お金で解決する問題は解決できますよね。たとえば、「お金があれば、〇〇が食べられるけど、お金がないから、○○が食べられない」というのと同じように考えてください。「学力を高めておいたけど、結果として、自分の学力より少し低い大学に行きたくなったら、それでもいい」ということです。

かつての塾生で、神戸大か大阪大には受かるぐらいの学力を持つ受験生がいました。でも、最終的に出願したのが、沖縄の琉球大学でした。理由は、 海洋の勉強がしたいから、です。

偏差値的に高い神戸大、大阪大よりも、やりたい勉強ができる大学を志望するようになったなら、そうすればいい、ということです。

とにかく学力をつけておいて、買いたいものが見つかった時に買えばいい、と同じです。無理やり何がしたいか考えろ、と言われても、今の時点で「ないもの」は「ない」んです。

そこをムリに見つけろ、と言われると「私って、何がしたいんやろう?」と自分探しになって、哲学的な問いにハマって、彷徨ってしまいます。

親御さんは、お子さんの意志を尊重してあげてほしいのですが、まだ意志が育っていない、育つにあたっての情報量が圧倒的に足りないときは、ムリに考えても逆効果になります。

そういったこともある、ということを踏まえて、接していってあげてください。

 

どの大学を志望するかより大事なものは 「学ぶ喜び」と「社会への関心」

誰であっても、自分が知らないものや、未経験なものに対して、自ら答えを出すって大変なことです。 まだ、ほとんど働いた経験もない学生に、仕事について明確な答えを持っている人がいなくても普通でしょう。

まだ、18か19歳の時点では、仕事にはどんなものがあるのか、全然わからないものです。

具体的に、何をするかわかっている仕事ってわずかですよね。社会のことを知らないと、自分がどういうことをやっていきたいかもわかりません。 料理したいのに、材料がないと言うのと同じです。

まず、材料を揃えないと何かをつくろう、とも思えませんから、進路も同じです。

こっちへ進みたいと思うには、そのために勉強して視野を広げ、世の中を知っていかないといけません。

どの大学を志望するかよりも、まず勉強して、学力つけて、勉強する楽しさを見つけてもらった方がいいです。 あるいは、そのための情報を与えて、世の中に関心を持ってもらうことですね。

こういう大学、こういう学部、こういう職業があるらしいよ、と情報誌や資料を身近に置いておいてあげるといいですね。

無理やり読ますのではなく、ただ情報を与えるんです。

こういう職業に興味がある、と言い出したら、同じ方向性の動画や本、ドキュメンタリー映画を紹介してあげたりして、視野を広げてあげてください。まだ高校生や浪人生の時点で、将来どういう仕事をするかを決めるのは難しいと思います。

だから、具体的な職業ではなく、こういう人間になりたい、こういう人たちのために仕事をしていきたい、というゴールを見つけていくことが大切です。

そういった意味では、ただ「かっこいい大人になりたい」でも十分です。

「意志」っていうのは、意味とかイメージの「意」と、「志」(こころざし)という漢字からできた言葉です。

つまり、受験生の周りにいる人たちは彼らに対して、「将来をイメージさせてあげること」と、「志が湧いてくる働きかけ」をしていってあげることが必要なんです。

 

受験勉強の目的~視野を広げ、将来一流になるための基礎固めと捉える

学校選びで言えば、高いところを目指して学力をつけておくと、後に、いざというときに

選べるようになる、と言いましたが、これは大学だけでなく、社会に出てからでも同じことが言えます。

たとえば、NHKに『プロフェッショナル』という番組があります。

あの番組でいろんなプロを見ていくと、分野が違っても、言っていることが共通していることってあるんです。たとえば、一流の選手、一流の医者、一流の職人、など出てきますが、その人たちの心構えをみていると、共通しているものがあるんです。

どの分野に進むにしても、求められる条件とか、スキルとか心構えというのは、どこでも共通するところが多々あります。

どの職業になりたいかを決められなかったとしても、受験生として、大学受験に挑む際、同じ心構えが必要ということはよくあります。ですので、「今、進路を決めなさい」というのではなく、将来、その受験生がどんな分野、どんな進路に進んでも活躍できるプロとしての心構えを身につけておくのです。

勉強法についても同じです。

大学に進んでも、社会に出ても、勉強は一生続けるものです。

勉強しなければならない、というより、 心の底から勉強が楽しい、と思える人にならなければ、どの分野であっても活躍するのが難しいです。 長い目で見て、将来、どの道に進んだとしても、成長しつづけ、活躍しつづけられるような人になれる人を目指すのです。



そういった視野が広がる環境づくりのサポートをするのが、親の役割です。

受験生も、「進みたい方向が決まってないから」を理由に勉強しないのではなく、将来、どんな分野に進んだとしても活躍できるような自分を目指すのです。

そのための基礎固め、土台作りをしていこうという気持ちで受験勉強をしていってほしいと思っています。

安定を求めるより、「自発性」で選ぶと活躍できる人材になっていく

次に、子どもさんに意志や目標はあるけど、その夢や目標で本当に大丈夫なのかなと、親からみて思う場合についてお話します。



たとえば、もっと資格をとった方がいいのではないか、とか、文系より理系のほうが安定するんじゃないの、といった心配をする親御さんもおられます。

学歴もある程度は関係あるとは言え、実際、一流企業で働いたからといって、必ずしも安定するとも言えません。それが、事実です。



会社自体は倒産しなくても、何百人リストラしたといったニュースが流れていますよね。

だから、今、どの大学に行ったからといって、どの会社に就職したからといって、安定した将来が保証される時代ではないのです。

それよりも、安定を求めるのではなく、本人がwant to(~したい)の気持ちで、向かっていける勉強や仕事を選ぶ方が、本人の成長につながったり、潜在能力が全て出せるようになったりするものです。



確かに、父母として心配な点はあると思いますが、そういう点について頭から否定するの

ではなく、「こうなった場合はどうするの?」と聞いてあげてください。

選択肢が2~3つしかない中で決めているように見えて、両親から見ると他にも選択肢があると思った時は、「こういう選択肢もあるけど、どうなの? こっちはどうなの?」 と他

の選択肢や情報を与えてあげて、最終的には本人に選ばせてあげるのがいいでしょう。



おそらく、親御さんからすると、お子さんが選ぶ道はリスクが高い、不安定ないばらの道だ、と見えるかもしれません。

ですが、お子さん本人は、その方向に関して実体験があるわけではありません。

それってリスクが高いよ、と言われても実感がないのです。



それは「ダメだ」と言われても、なぜ、ダメなのかわからないのです。

食べたことのない料理をいくら説明しても、その味が伝わらないのと同じです。

痛い目にあったらやめる、と言うのであれば、それぐらいのやる気しかなかったということです。

痛い目にあっても、それでも続けたいと思うなら、それぐらいの覚悟があるわけですから、親御さんも応援しつづけてあげてほしいですね。



まとめると、まず周りの大人は、様々な情報を提示してあげてください。

でも、最終的に選ぶのは本人に任せてあげてください。

もし、本人が選べないなら、さらに情報を与えてあげるか、まだそのタイミングではない、ということです。

子育て、というのは、農業と同じで、タイミングが命なんです。

種を植えたからといって、翌朝すぐ目が出るわけではありません。

でも、本人がちゃんと決めなければならない時がきたら、絶対に決めるようになっていますので、焦ることなく気長に待ってあげることです。



そういう意味でも、受験というのは受験生にとっては闘いではありますが、親御さんにとっても「待つ修行」のようなものです。



お子さんのペースは、親御さんの期待するペースではないかもしれませんが、そんな時こそ「待つ修行」をしている、という気持ちで見守ってあげていただければ、と思います。

ぜひ、参考にしてください。