はじめに:漢文は捨ててはいけない!
多くの受験生が漢文を捨てようとします。
「漢文まで手が回らない!」そんな悲痛な叫びをよく耳にします。
しかし、それは非常にもったいない。
実は、漢文はうまく勉強すれば満点が狙えるからです。
「漢文で満点? とんでもない! いちばんニガテなのに……」
そう思うかもしれませんが、大丈夫。ホントに誰でも満点が狙えます。
漢文は、ゼロからスタートしても、ほんの数カ月の勉強で、一気に満点が狙えるありがたい科目なのです。
現役生であれば、漢文の勉強を本格的に始めるのが、11月、12月頃になってしまうこともあるでしょう。
でも、それまでに漢文句形さえしっかり覚えておけば、1〜2カ月で得意にできるので、最後の最後まであきらめないでください。
1.共通テスト漢文の概要
1-1.共通テスト漢文の形式
共通テストの漢文は、配点が50点です。
共通テスト国語の試験が計200点満点ですから、評論文、小説文、古文、漢文の配点がそれぞれ同じということになります。
問題文一題に対して、設問数が6つの設問で構成されており、マーク数が8つあります。
そのうち、知識を問う問題では、漢字・語句に関して、返り点やレ点に関してそれぞれ問われます。
一方、内容を問う問題では、部分的な読解と全体的な読解の問題にそれぞれ分かれています。
1-2.共通テスト漢文の特徴
共通テスト漢文の問題は、現代文に比べると問題文の長さが短く、短時間で読むことができます。
難易度としても、奇問や難問も少なく、あくまでも標準的な問題が中心です。
古文と比べても、覚える量が少ない為に短期間で勉強を進めることができるという利点もあります。
冒頭でもお伝えしましたが、共通テスト漢文は短期間で満点が狙えます。
浪人生であれば、夏休み前から漢文の序盤の勉強を始めていけば、十分満点が狙えます。
2.共通テスト漢文で満点を取る勉強法
では、共通テスト漢文で満点を取るための勉強法を具体的に紹介していきます。
漢文で満点を狙う条件は、たった2つだけです。
1.古典文法をマスターしていること
2.基本句形(約100種類)を暗記していること
できれば、漢文を勉強する前に、古典文法をマスターすることをおススメします。
漢文は古文の知識がベースになる部分が多いので、古文がわかっていると、効率よくマスターできます。
古典文法の勉強が必要だと感じる場合には、古文の勉強法についての記事を参考にしてください。(リンク)
では、ここからは共通テスト漢文の具体的な勉強法を、序盤・中盤・終盤に分けて説明していきます。
2-1.序盤〜句形の反復練習
漢文というのは、句形がわかっていなければ、全く読むことができません。
たとえば、レ点(れてん)や上下点(じょうげてん)や一二点(いちにてん)などの返り点がわかっていないと、漢文は読めません。
また、再読文字の「将 = まさに〜せんとす」などは完ぺきに覚えておく必要があります。
このような漢文の基本知識は、序盤でマスターしましょう。
句形の暗記に失敗する原因は、いきなり教材の公式で覚えようとするからです(私もそうでした……)。
「使ム〜ヲシテ」この形で覚えようとすると、わけがわからず、頭に入ってきません。
公式から覚えようとすると失敗します。
句形を暗記する際は、必ず、例文ごと覚えるようにしましょう。
そのほうが応用も効きます。
句形の暗記にピッタリなのが、この本です。
『古典文法10題ドリル 漢文編』斉京宣行、三宅崇広・著(駿台文庫)
駿台文庫
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薄っぺらい本ですが、内容はギッシリつまっています。
古文の文法と、漢文の文法とが対比されている点も素晴らしいです。
この本に出てきた例文を徹底的に暗記してください。
最初から最後まで読み終えたら、テスト形式の別冊もついているので、それを使って"完ぺきに"暗記するようにしてください("完ぺきに"というところが序盤のポイントです)。
『大学入試ぶっつけセンター漢文』飯塚敏夫・著(文英堂)
文英堂
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この本もおススメです。
見やすいレイアウトで、必要な句形がギュ〜ッとまとまっているので、反復練習にもってこいでしょう。
必須知識86を"完ぺきに"暗記するだけで、漢文の基礎が完成します(これも、"完ぺきに"というところがポイントです)。
どうしても時間がないという人に、特にオススメです。
2-2.中盤〜魔法の基礎固め
中盤では、序盤で"完ぺきに"覚えた知識に息吹(いぶき)を吹きこみます。
南極老人が言うには、「どういうわけか、漢文は、基礎を"完ぺきに"覚えたはずが、いざ、別の例文で質問されると、答えられない生徒が多い」ということです。
そうならないために、南極流では"漢文は4回基礎を固める"という方法を使います。
違う角度から、4回、基礎を固めるのです。
こう言うと、「えっ、4回も?」と思うかもしれませんが、2回目は、1回目よりも10倍ラクです。
4回目は、もう、漢文が楽しくてしかたがないでしょう。
約束しますから、やってみてください。
まずは、2回目の基礎です。この本を使います。
漢文ヤマのヤマ 共通テスト対応版 (大学受験超基礎シリーズ)
この本では、覚えた知識を共通テストでどう使うのかということを意識して勉強を進めてください。
せっかく知識を暗記したとしても、実際の共通テストで、活用できなければ意味がありません。
その方法をマスターするために使います。
次に、3回目の基礎です。
使うのはこの本です。
『漢文早覚え速答法 共通テスト対応版』田中雄二・著(学研教育出版)
これは素晴らしい本です。
しかし、序盤を飛ばして、いきなりこの本をやると、挫折してしまいます。
この本のよさは、中盤でないとわかりません。
必ず、中盤でやってください。
特に、148ページ以降は秀逸(しゅういつ)です。
時間がない人でも、序盤を終えた後、ここだけは必ず読んでください。
"漢文は4回基礎を固める"の最後(4回目)はこの本です。
大学入学共通テスト 飯塚敏夫 漢文講義の実況中継 (実況中継シリーズ)
この本は講義形式ですから、問題と設問があれば、それを自分で解いてから、本文の解説をしっかり読んでください。
序盤〜中盤で、漢文の"骨"の部分をしっかりマスターしてからこの本を読むと、こんどは漢文の"肉"の部分がついてきます。
この本から学んでほしいことは、漢文常識です。
古文にも古文常識があったように、漢文にも漢文常識というものがあります。
当時の文化や習慣などを、ある程度知っておかなければ、書き下し文、現代語訳ができても内容がサッパリわからない、ということになります。
その点、『飯塚センター漢文講義の実況中継』を読めば、漢文常識・共通テスト古文のテクニックが身につき、当時の中国の情景が想像できるようになるでしょう。
そして、収録されている漢文は、すべて完ぺきに、
①書き下し文にできる(30回以上、音読するのがおススメ)
②現代日本語訳にできる
③内容理解(説明)できる
これらの3つのことができるように反復練習してください。
ちなみに、南極老人の話をしますと、どういうわけか、「漢文はすごく好きだった」そうで、高校生の頃から、漢文だけはよく勉強したそうです。
ところが、これが後から考えてみると無駄の多い勉強法だった……とのこと。
当時は、『漢文法基礎』『漢文ミニマム攻略法』『漢文標準問題精講』『多久(たく) 漢文講義の実況中継』という本ぐらいしか、有名な本はなかったそうです。
『漢文法基礎』は、600ページぐらいある本で、南極老人は、1年中この本と格闘したそうですが、全く身につかず、偏差値は1ミクロンも上がらなかったそうです。
こういう大著(たいちょ)は趣味で読むのならまだしも、「受験勉強には何の役にもたたない」、「大変な時間の浪費であった」と述懐(じゅっかい)されています。
究極のところまで効率性を追求した"南極流勉強法"が誕生した背景には、こうした南極老人のたくさんの失敗経験があるわけです。
『漢文ミニマム攻略法』にも挫折したそうです。
そもそも何が漢文のポイントなのかがわかっていない者にとっては、情報量が多すぎて、「ミニマム(最小限)でもなんでもなかった!」そうです。
『漢文標準問題精講』は難しすぎて挫折したそうです。
その中で、群を抜いてよかったのが、『多久(たく) 漢文講義の実況中継』です。(現在、絶版のため入手不可能)
この本だけは、とにかく面白くて、1日で読んでしまったそうです。
その後も3回ぐらい読んで、それ以来、漢文が得意になり、現役のセンター試験では満点がとれたそうです(南極老人は、9年連続で、漢文で満点をとっています)。
2-3.終盤〜完成の決め手は過去問
さあ、終盤です。終盤は問題練習です。
ここでは主に、共通テスト対策について述べますが、二次・私大対策にも有効です。
とにかく、過去問を解いて、実戦形式になれましょう。
次の、①〜⑤の流れに従ってください。
①最低10年分、解くこと(共通テストの場合は、本試・追試、あわせて20回分)
②採点後、解説を読んで「なぜ、間違えたか?」を分析すること
・間違いの原因が、書き下し文のミスである場合 → ③にすすむ
・間違いの原因が、日本語訳のミスである場合 → ④にすすむ
・間違いの原因が、漢文常識(知識)の不足である場合
→解説を読んでもわからない場合は、漢和辞典(『漢語林』『新字源』など)で調べる。
それでもわからない場合は放っておく。深追いは禁物!
③問題文は、全文、書き下し文に直せること
→句形のチェック(序盤のテキストに戻る)
→漢字のチェック(知らない漢字は、漢和辞典で調べるべきだが、深追いは禁物!)
④問題文は、全文、現代日本語に訳せること
→句形のチェック(序盤のテキストに戻る)
→漢字のチェック(知らない漢字は、漢和辞典で調べるべきだが、深追いは禁物!)
⑤仕上げは、音読30回以上
→書き下し文のとおりに音読する。
→東大をはじめ、二次試験の漢文対策は、音読30回をした上で、書き下し文で実際に書いてみる(3回)。
漢字で書くべきところと、ひらがなで書くべきところを間違えないようにする。
これで完ぺきです。
せっかく問題を解いても、解きっぱなしにしたのでは、何にもなりません。
1題、問題を解くたびに、①〜⑤の作業をすれば、漢文の濃密(のうみつ)なエキスのようなものが吸収できます。
メキメキ"漢文(かんぶん)脳(のう)"が目覚めます!
3.共通テスト漢文 オススメの問題集
序盤から中盤にかけては、"4回基礎を固める"という勉強法を紹介してきました。
そして、終盤には過去問演習で、漢文脳を目覚めさせる方法についてお伝えしてきました。
その上で、まだ時間と余力があれば、共通テスト対策に次の2冊をおススメします。
『共通テスト総合問題集 国語』(河合出版)
『大学入学共通テスト実戦問題集 国語』(代々木ライブラリー)
東大対策なら、次の2冊です。やり方は、過去問と同じです。
『東大入試プレ問題集 国語』(代々木ライブラリー)
『実戦模試演習 東京大学への国語』(駿台文庫)
3.おわりに
ところで、共通テスト漢文は、句形さえわかれば、本文を読まなくても解ける問題があります。
そういう問題で、いかに失点をなくすか。
これが満点ゲットの必須条件です。
共通テストの試験時間は80分です。
問題の数は4つなので、1問あたり20分ということになります。
しかし、現代文、古文のところで、見直しの時間が必要になります。
理想としては、漢文が15分前後で解けるようになると、余裕をもって共通テストにのぞめます。
共通テストは時間との戦いなので、1分1秒も無駄にはできません。
それぞれの問題を、どのくらいの時間をかけて解くのかを、ある程度、前もって決めておいて、本番で時間配分の微調整をします。
試験が始まると同時に、すべての問題を見渡し、だいたいの直感で、「評論19分・小説18分・古文20分・漢文16分・見直しに6〜7分」というふうに、大まかな時間配分を決めていくのです(問題の難しさによって、時間配分は異なります)。
これがゴールからの発想です。
こういう習慣をつけると、潜在意識のほうから、「よし、この問題を16分以内に片付けるぞ!」と働き出しますから、本当に16分以内に解けるようになります。
「ホントなの?信じられない……」と思うかもしれませんが、やり続ければ、必ず誰でもできるようになります。
これができるかできないかで、共通テスト国語で8割〜9割とれるかどうかが決まります(とれる人は、みな、それができるからとれているのです)。
よく、寝る前に、「明朝は、6時に起きるぞ!」と自分に言い聞かせて、本当に、目覚まし時計を使わずに、キッチリ6時に起きられる人がいます。
そういう人は、潜在意識の使い方がうまいのです。
普段から、潜在意識に命令して、その通りに動いてもらうように習慣づけると、イザというときに、本当に頼りになります。
ぜひ、普段から意識するようにしてください。
そして、その通りに動いてくれるようになったら、心から「潜在意識さん、ありがとうございます」と言うようにしてください。
もっともっと働いてくれるようになりますから。
共通テストに限らず、世の中は時間との戦いです。
ありとあらゆる試験、勝負ごと、仕事と名のつくものは、時間との戦いなのです。
「180分あれば満点はとれるけど、80分だと6割しかとれないよ……」という人は、かなりの学力はあるのかもしれませんが、残念ながら、大学受験では評価されにくいのです。
では、どうすれば、時間に強くなれるのでしょうか?
①潜在意識に動いてもらう
②ゴールからの発想を身につけること
③本番では、1つの問題を長時間、考え込まないこと
①と②は、今、話したことです。
③は、もし考えてもわからなければ、一応の答えを書いておくということです(記述式は、わかるところまで書いておきます)。
その設問は飛ばして、後から考えるようにします。
そのためにも、最終的には、5分以上余るように試験問題を解く練習をしなければなりません。
過去問を解き始めた当初は、まだ速く解くことに慣れてないので、制限時間内に解き終わらなくても気にしないでください。
1~2ヶ月もすれば、だんだん、時間配分のコツがつかめるようになります。
秋ごろ(11月)までは、時間を気にせず、正しく読むこと・解くことを目標にしてください。
もし、基本知識の抜けがあれば、序盤~中盤の教材に戻って復習しましょう。