こんにちは。
『大学受験塾ミスターステップアップ』の村田です。
「勉強しないと、この先の人生がたいへんになるのはわかっている。
でも、どうしてもやる気が出ない…」
「塾に行かなきゃいけないのに、人間関係の小さなストレスを考えると、
足が向かない…」
今回は、多くの受験生が一度は抱えるであろう、こうした心の葛藤と、
その乗り越え方についてお話ししたいと思います。
「わかっているけど、できない」という壁
以前、当塾に、ある一人の塾生がいました。
彼女は、高い目標を掲げ、ご両親の反対を押し切ってまで
浪人生活をスタートさせた、強い意志の持ち主でした。
しかし、しばらくすると、塾に来られない日が増えていきました。

心配して話を聞いてみると、
「他の塾生にどう思われているか気になる」
「人といると疲れる」
といった、さまざまな理由を話してくれます。
ですが、話の本質は、どうも別のところにあるようでした。
わたしは、彼女に問いかけました。
「周りのひとのことは、いったん置いておこう。
いま、いちばん向き合うべきなのは、
そもそも君自身が『塾に来ない』という選択をしている、
その事実そのものではないかな? これから、どうしていきたい?」
彼女は、自分のことを棚に上げているわけではない、と反論します。
しかし、わたしには、彼女が、知らず知らずのうちに、
ある「負けパターン」に陥っているように見えました。
その「嘘」は、親にしか通用しない
わたしは、彼女に厳しいようですが、
大切なことを伝えました。
「大学受験でうまくいかない原因は、
たいていの場合、自分自身や、
あるいは他人に『嘘』をついているからだよ。
小さな約束を破る、都合の悪いことから目をそらす、
その場しのぎの言い訳を繰り返す…。
その不誠実な姿勢が、成長を妨げているのかもしれない。
そのやり方が通用するのは、親御さんの前だけだ。
社会に出れば、一人の大人として、
誰も『事情』をそこまで汲んではくれないよ。
いま、この大学受験という場で、
人として筋を通すことを学ばないまま、
本当にこの先、大丈夫だろうか?」
わたしたち塾は、ここに来る塾生を、
けっして「子ども扱い」したくありません。
一人の大人として向き合い、ここだけでなく、
社会のどこへ行っても通用する、
人間としてのあり方を伝えていきたいと、本気で考えています。
「わたしには、いろいろな事情があるんです」
「このストレスを考えれば、できなくても仕方ない」
そうやって自分を守る生き方は、いまは楽かもしれません。
しかし、そのやり方は、今後、大学、社会、人間関係、結婚と、
人生のあらゆる場面で、
分厚い壁となって目の前に立ちはだかり続けることになるのです。
逃げたことは「運命」として追いかけてくる
わたし自身も、君くらいの歳のころは、勉強から逃げていました。
友人関係に逃げ、恋愛に逃げ、夜の街に逃げていました。
「自分はダメな人間だ」と、まるで老人のように未来を諦めていたのです。
しかし、この塾に来て、なんとか最後までやり抜きました。
心理学者のユングは、
「向き合わなかった問題は、運命として追いかけてくる」
という言葉を残しています。
いま君が感じている苦しさは、言い換えれば、
これまで君自身が向き合うことを避けてきた課題が、
目の前に現れている、ということです。
大学受験を、単なる学歴を得るための期間ではなく、
「人生を立て直す一大プロジェクト」だと捉えて、
ここで奮起することができれば、その経験は、
君の20代、そしてその先の人生の、
かけがえのない土台(雛形)になります。
それくらい、この一年は大切な時間なのです。
処方箋は、驚くほどシンプル
やる気や覚悟が、毎日揺れ動いてしまうのは、
みんな同じです。わたしもそうでした。
大切なのは、意志や気概といった大層なものではなく、
もっと単純なことです。
朝起きて、
「あぁ、塾に行きたくないな」
「今日は、なんだか良い予感がしないな」
と思う。
多くの受験生が、そう感じることがあるでしょう。
そのときに、
「それでも、行くだけ行ってみよう」
と思えるかどうか。
その、たった一歩が、すべてを変えるのです。
ストレスというものは、じつは行くまでがいちばん大きい。
来てしまえば、不思議と半減しているものです。
来て、誰かと話せば、解決の糸口は見つかります。
誰かの視線が気になるなら、席を変えればいい。
誰かに何かを言われるなら、距離を取ればいい。
あるいは、勇気を出して対話してみればいい。
もちろん、ひとと関わるかぎり、ストレスがゼロになることはありません。
いいとこ取りはできないのです。
しかし、その関わり合いの中でこそ、本当の絆は生まれていきます。
「昔はできたのに」という思い込みを乗り越えて
話の後半、彼女は、ぽつりぽつりと、自分の過去を話してくれました。
高校生のころ、部活動やアルバイトに打ち込んでいた時期があったこと。
そのときは、自分なりに責任感を持って、
最後までやり遂げることができていたこと。
しかし、人間関係のつまずきや、
体調を崩したことなどがきっかけで、
途中で投げ出すかたちになってしまったこと。
そして、その経験以来、何か一つのことを最後まで続けたり、
責任を持ってやり遂げたりすることができなくなってしまった、と。
「昔はもっとできたはずなのに…。成長するどころか、
どんどんダメになっていく気がするんです…」
そう話す彼女の目には、涙が浮かんでいました。
わたしは、彼女に伝えました。
若いころというのは、そもそも心が不安定で、
揺れ動きながら成長していくものです。
できるときもあれば、できないときもある。
わたしも高校生のころは、さっき偉そうに話したことなんて、
まったくできていませんでした。
毎日、完ぺきにできなくてもいい。
だから、まずは「塾に来る」ということ。
そして、「勉強を見てもらう」ということ。
その対話の中から、一緒に解決策を考えていこう。
もともと責任感があって、物事を深く考えられるところが長所。
対話を閉ざしてしまったら、その良さが消えてしまう気がするよ、と。
話の始めは、反発の空気が強かった彼女も、
最後は、静かにわたしの話を聞いてくれていました。
自分の弱さと向き合い、再び立ち上がろうとする。
その勇気が未来を作っていきます。








